有川 浩 ラブコメ今昔

ラブコメ今昔

ラブコメ今昔

「クジラの彼」に引き続き自衛隊員たちの恋愛模様を描いた作品です。登場人物がほとんど異性に慣れていない人たちばかりで、反応が初々しかったりぎこちなくて、そこがとても良い。実生活では恋愛からは離れていますが、読むぶんにはどれだけ「あまあま」でも構わないと思っています。楽しい小説でした。少しずつ感想を。

新しく広報に入った女性が上官の恋話を聞きだそうとする話です。主人公は広報の女性なのか、上司なのか若干微妙なところですが、上司だとしましょう。自衛隊員って、勧誘されている人を見ているとちょっとあまり物事を考えなさそうな少年とかなのですが、入るとそれなりに毅然とするのでしょうか。それなりに格好いい彼です。奥様がなかなかの傑物ではないかと思います。

  • 軍事とオタクと彼

関西人の彼女はとてもパワフルです。ウェブの世界に慣れてしまうとどの程度のオタクが重度なのかよく分からなくなっています。たぶん、やや重症気味だと自覚しているのですがどうでしょうか。オタクの彼は小池徹平のイメージで読み進めました。彼女は若いときの藤原紀香

  • 広報官、走る

一見ちゃらちゃらしていても実は誠実である、とのキャラクタは非常に、ひっじょうによくありますが嫌いではありません。人から見られるときはあまり深刻なキャラクタにはなりたくないものです。どの世界にも妙にこどもっぽい人がいて、何でこんな人が上司にいる(出世している)のだろうと思うことも多々ありますが、それは自分から見た一面しか見えていないことが多いです。このプロデューサも、作品を際立たせるために悪い部分ばかりが強調されていますが、有る程度出世していると言うことは、どこかに優れた部分が有るのではないでしょうか(コネがまかり通る世界は知りませんが)。

  • 青い衝撃

珍しく、ちょっとどろどろした作品です。誰かを好きになるのではなくて属性を好きになる人って結構いるのではないでしょうか。あまり人のことは言えません。属性から入るのもありかとは思うのですが、最終的には人を見ることができるようにならないといけませんね。

  • 秘め事

これもちょっと珍しい方向に行っています。何が珍しいかは読んで感じていただければ、と。

  • ダンディ・ライオン またはラブコメ今昔イマドキ編

「ラブコメ今昔」に登場した元気のいい彼女の恋模様。ストーカと熱いまなざしは紙一重ですね。よく一重の反対側に行っていたような気がします。反省しています。ぐは。それは、さて、おき、副題をつけるなんてほほえましいではないですか。人の作品のそれを考えるなんて可愛らしいではないですか。それが当たったとか当たっていないとか、なんだかなあもう好きにしたらいいじゃないのさ。全くそんな発想が無いので、別世界の話のようでした。お似合いと思います。

全体として、登場人物たちは自分の恋心に嘘をつきません。そこがとてもいいですね。自衛隊を舞台としているからなのか、作者の本質的なものなのか、意図しているものかは分かりませんが、とても好きです。好きな人に好きだと言うことは簡単なようで難しい。タイミングを逃してしまうことが多かったし、これからはあまり縁もないだろうし、この作品に出てくるようなキャラクタが羨ましいですね。これからもどんどんこんな作品を(同じものはいりませんが)かいて欲しいものです。