物語としての読み物には若干物足りないところもあるのですが、もともとのコンセプトであった京都を知ることと英語を話せるようになることに関しては読み応えがあった作品でした。正直たぶん途中で落とすと思っていたのですが無事終了。あとがきにもあったように周囲の協力あってのものかもしれなくて、それがPerfect worldを求める主人公と重なっている部分は多いのではないでしょうか。
実際に声に出して読むとか、じっくり一つ一つの単語や熟語を読んでいけば本当に英語が話せるようになるのではないか、と思わせる作品でした。現実に戻れば英語を話すかどうかではなくて、話したいことがあるかないかなのでどれだけ英単語を知っても言い回しを知っても流暢に話せるようになるかどうかは別の話。それでも違う言語だとちょっと大胆になれるところもあるような気がしていて、日本語で愛しているとか、ちょっとありえない恥ずかしさだと思うのですが英語でI love youぐらいならいえてしまいそうなあたりが怖い。文化が違って当たり前とか、少しずつのすれ違いを通して互いを知り合うことを普通に思っていて実行できる人にとってはものすごくためになる本田と思います。
運命とか宿命とかが出てくる作品で、多少は同意できるところもあるのですが決まった道筋があることはある意味楽ではあるもののある意味あじけない。生まれたことに意味があるのか、ないとしたらなんのために生まれたのかとか考え出すとちょっと物悲しくなります。そういった悩みに真正面から向き合った人が僧侶などになるのかもしれない。そこまで真剣に考えることは出来なくて、生きていることは生きていることに過ぎない。楽しみも悲しみも基本的には個人のものであり、大きな何かにつながっているとは今のところ感じられません。
長い物語になるとどうしてもキャラクタひとりひとりにそれほど紙面を割くことも出来ず、気になった存在がいてもちょっとしか描写されないことは避けられません。この作品では出来るだけ均等に描こうとしたのか逆にほんの一部しか見ることが出来なくて残念だったキャラクタがたくさんいました。もしかしたら想像の余地があるぶん読書体験としては幸せなのかもしれませんが、この分量で描ききれるだけにしてもらっても良かったかなとか少し思います。
ともあれ、長い期間本当にお疲れ様でした。西尾維新さんも含めて、素敵な物語を提供してくれたことに感謝。