ついに最終巻です。これまでの作品でいろいろとしてきた著者なので、もしかしてとは思っていたものの、かなり急展開です。最終巻なのでこれまで読んでいない人が読むことはほとんどないと思うのですが、あらすじだけならこの巻だけでも分かってしまうかもしれません。要注意。
とりあえず、面白かった。これほどの質を保ったまま作品を書くことって出来るのだなあと感心します。まあ、雑誌に連載するのだと思えば同じことなのかもしれません。装丁が特殊で実際の文章量というか、たとえばまとめた本とかが出たらどれくらいの分量になるのかは分かりませんが、簡単なことではないのは確か。素直に賞賛します。
せっかくのきれいな装丁なので書影を並べたい。というわけで全体の感想を含めて書きます。
もともとは講談社の企画として始まったシリーズで、パーフェクトワールドとともに購入を始めましたがあちらは途中で止まってしまいました。その理由はあちらを読み終えたときにも書くと思いますが、つまらないとかではなくて半分勉強の本なのでそんなに早く読めないという点があります。それに対してこちらは完全にエンタテインメント作品だったので読みやすいことに加え、西尾維新のファンとしては毎月の楽しみでした。
やられキャラ一人をとっても意外と覚えているほどそれぞれのキャラクタが印象的で、そこがいいところだと思っているのですが今回もまにわにとか、そのほかの刀を持っている敵とかいろいろと覚えています。最終巻ではそれぞれの刀がまた出てきたのですが、それぞれの刀を所有していたキャラクタが思い出せるところに著者の力量を感じます。現実に存在するのかといわれると決してありえないけれど、伝奇ものとしては十分ありなキャラクタでした。
はじめに刀の名前をすべて公開し、名前からどんな刀なのかを読者に想像させる。ある読者にとっては想像を超えるものもあったでしょうし、想像通りのものもあったかもしれません。物語の楽しみに加え、話の展開や道具を想像する楽しみまで提供してくれたこの作品はとてもよかった。もし回りにこの物語について話すことが出来る人がいたら、こんな刀じゃないの、とかあれはちょっとありえないよねとかの会話を楽しめたのではないかと思います。多分ファンサイトとか掲示板とか、よく知りませんがTwitterとかでそういったやり取りがあったのではないでしょうか。
途中途中のとがめと七花のやりとりも面白かったし、終盤に登場してきた否定姫とのやり取りも面白かった。他の話も読みたくなるかと思っていたのですが、思いのほか満足感があって、これはこれで終わっても良いと感じる作品でした。本当に面白かったけど唯一難点をいえばやはり価格でしょう。途中から読み始める人はあまりいなかったのではないでしょうか。そしておそらくそういった読者(まだ読んでいないのでしょうが)の要望に文庫や新書で発売されるでしょう。売り方としてはそれはそれでありと思いますし、今は仕事をしているので多少高めでも購入できるのですが、もう少し若い子たちのことも考えて作ればいいのに、と思います。たとえば2ヶ月遅れで新書でだすとか。
最後を否定で締めくくるのはいやなのでもう一回だけほめておきます。とても面白かった。