ハリスン キム 死せる魔女がゆく 上下 [魔女探偵レイチェル]
死せる魔女がゆく 上 [魔女探偵レイチェル] (ハヤカワ文庫FT)
- 作者: ハリスンキム,エナミカツミ,月岡小穂
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: 文庫
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死せる魔女がゆく 下 [魔女探偵レイチェル] (ハヤカワ文庫FT)
- 作者: ハリスンキム,エナミカツミ,月岡小穂
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/21
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解説には、最近のアメリカのホラーは毎月一冊は現在を舞台にした吸血鬼ものが出版されるとありました。先日読んだドレスデン・ファイルもあがっていましたが、あれは敵というか、闇社会に吸血鬼がいただけなので、解説で言う吸血鬼の作品とは必ずしも主役だけが含まれているわけではなさそうです。
日本だとライトノベルの分野に多いでしょうか。それこそ毎月どこかの作品で吸血鬼が登場しているのではないでしょうか。少し話が逸れるのですが、吸血鬼ってあの牙でどうやって血を吸っているのでしょうか。犬歯が尖っていて頸動脈をさすのはわかるのですが、実際に刺そうと思ったら一昔前の映画くらい大げさに長くないと刺さらないし、大量出血するくらい深く刺したらなかなか止血できないだろうし。もしかして牙の中が中空になっていてストローみたいに吸い上げているのでしょうか。それにしたって血は止まりません。血が止まるような何かが唾液などに含まれていて止血しているのかとも考えますがいかがでしょうか。もしくは、血を吸う動作というのは見せかけのもので、超常的な何かで血を吸っているのかも知れません。だから血を吸われた人の首筋からはたらりと血が流れる程度で済んでいるという可能性もあります。
吸血鬼といえば菊地秀行がすぐに思い浮かびます。吸血鬼ハンターDとか、魔界都市シリーズの夜香などがいます。その他にもたくさん名前が挙がってきますが、吸血鬼=美形のイメージがあります。これはどこから来ているのでしょうか。異形の存在は人と比べて美しいものも多い。ファンタジィで言えばエルフとか。もちろん、美しくないものもたくさんいるわけですが、ただ単にバランスをとるために美しい存在を生み出したわけではないと思います。どういう思考から吸血鬼が美しいとなったのか。単純に考えると、吸血鬼は血を吸う存在であり、血を吸ったものを操る場合が多い。それによって被吸血側は永遠の命を得たり、快感を得たりしますが、陽の光を浴びることができなくなったり、制限されることも多い。それでも身を投げ出させるためには理性を失わせるほどの美しさが必要だと考えたのでしょうか。まあ、魅了の能力を使えるというのも多いので必ずしもそうとは言い切れない部分もあります。それでも、人がかしずく存在であるならばいろんな部分で超越した存在であるはずだ、そうあって欲しいとの思いから吸血鬼=美形となったのかな、とぼんやり思いました。
さて、物語の感想はというと、レイチェルの一人称で話は進むのですが、レイチェルの思い込みのせいでいろいろ失敗するのですが、失敗したことよりも成功したことを思い出すこととか、妙に自己評価が高いことにさすが海外の人(自己評価は低いので)だ、と思わないでもないですが、元気のあるキャラクタはとても良い。あと、主人公にしては意外なほどすぐに異性に惹かれるのも面白いかもしれません。すぐに「素敵な声」とか言い出すので好みの幅が広いなあ、と感心するばかり。アイヴィも魅力的なキャラクタなのですが今回はあまり出番がなく、続編に期待です。もしかしたら次はアイヴィの一人称で話が進むのではないかと期待しているのですが、どうなるでしょうか。海外の作品では良くあるのですが、一つ一つの場面での描写が細かいため、全体としての話がかなり短めに感じるかもしれません。それでも読んでいる最中に話の進まなさを感じることはないし、テンポの良い展開が続きます。エナミカツミさんのイラストは綺麗で、はじめは結構あっているかなと思っていましたが読み進めるうちに、想像上の姿がもう少し年齢が上の女性像になってきたので最後は若干違和感がありましたが、日日日の小説に寄せたイラストよりはいい感じで、空白部分が多いのも(翻訳された)海外の小説らしくとても良かった。アメリカの人はどんな姿を想像して呼んでいるのでしょうか。もし具体的な俳優を想像しているのなら是非知りたいところ。