沖田雅 オオカミさんとマッチ売りじゃないけど不幸な少女

オオカミさんとマッチ売りじゃないけど不幸な少女 (電撃文庫)

オオカミさんとマッチ売りじゃないけど不幸な少女 (電撃文庫)

 童話をモチーフとしたキャラクタが活躍する学園ものです。もう登場したキャラクタがそれぞれの個性を確立しているので後はどうやって話を盛り上げるとか話を進めるかが注目する点になっています。今回はおおかみさんとりんごさんが主人公らしくかなりの割合で登場していましたが、主人公といっても脇役が登場したときに盛り上げる役割のような二人なのであまり印象的な場面はなかったように思えます。脇役もそれぞれ個性的な面々で、面白かったのはアリスさん。こういったコメディではまじめな性格の人のほうが面白くなることが多いかも。
 帯にもあるようにおおかみさんのライバルが登場します。男性の主人公である亮士は人と眼が合わせられないほど内気な性格の少年ですが、巻を重ねるごとに少しずつ改善されています。とはいってもこのままでは卒業(するのかどうかはわかりませんが)までに告白したり付き合ったりするのは難しいのでそろそろ劇的に改善するような出来事がほしいところです。その変化をもたらす原因となりうるのか、今回登場したマチ子さんは亮士のことを気に入り、おおかみさんの気持ちを揺さぶりますが、結局大して(表立った)変化はありませんでした。それでも、次回から少しは何かが変わりそうな予感をさせる終わり方です。
 ところで、実は登場人物が地の文に突っ込むような話はあまり好みではありません。視点があやふやになるというか、どんな世界で生きているのかが今ひとつイメージしにくくなるからです。まあ、特別嫌いというわけでもないので楽しく読んでいますが(どっちなのだ)。
 続けようと思えばどれだけでも続けられそうですが、意外と誰もが知っているような童話は少ないかもしれません。おき楽に書いているようで実は何をモチーフとするか考えて考えて書いている作品なのかも知れません。実際にどんな思いで書いていようとも、お馬鹿な小説をばかばかしく書くことができるのは能力のひとつだと思うのでこれからもがんばってほしい。脇役でもいろいろと話を盛り上げられそうなのも利点といえば利点だし、欠点といえば欠点ともいえます。個人的にはあと3冊ぐらいで終わるのがちょうどいいのですが、どれくらい続くでしょうか。