森薫 エマ 9巻

エマ 9巻 (BEAM COMIX)

エマ 9巻 (BEAM COMIX)

ほとんどエマが出てこない(おまけぐらい)のでこのタイトルが適当かどうかわからないくらいですが、相変わらず著者のこだわりが随所に見られてとても楽しい作品です。リスの話は意外でしたが、これはさすがに「エマ」ではなくていいかな、と思いつつほかのどの媒体で(どのタイトルで)書けばいいのか思いつかないし、好きなようにかけるのも作品が人気を得たからでしょうからご褒美といえばご褒美なのかもしれません。
やはり当時の風俗が描かれているところがとてもいい。休日に買い物に行く少女が買い物を頼まれる話があるのですが、これを見ていると買い物に行くのも一大イベントだったのだな、と感じます。今でも買い物に行くのは娯楽のひとつですが、このころはほかにそれほど娯楽があるわけでもなく本当に楽しい出来事のひとつだったのでしょう。それがいいとか悪いとかではありませんが、娯楽の種類が増えることでひとつの楽しみに対する感激の度合いが変わってしまったと思います。これは子供から大人になることでも似たようなことを感じていて、大人になってできることは増えたけれど、一つ一つから受ける感激はもしかしたら減ってしまったかもしれません。小さいころから読書が趣味で、大人になってできることは増えたのかもしれませんがあまりほかのことに手を出してはいません。数をたくさん読むことで多少ひとつひとつにたいする印象が薄くなってしまったかもしれませんが、それでも読む本がなくならない幸せを感じます。
エマも残すところ後わずかとなりました。小物の描写がとても楽しい作品ですが、当然話自体も面白いし、本当に当時こんな感じだったのかもしれないと感じさせる力量がすばらしい。次の作品ではどんなものを書くのかわかりませんが、とりあえず出版されたら購入する予定。