水瀬葉月 C3-シーキューブ

C3―シーキューブ (電撃文庫)
呪われた道具は受け続けた呪いがある閾値を越えると人格を持つ、と言う設定のお話。父親が風変わりな職業であるという設定は便利なのかもしれませんが、少々お腹いっぱいな部分もあります。普通に会社で勤めているのですが、特殊な職業は目立つもののほとんどの人はそんな職業ではなくありふれた職に就くことがほとんどでしょう。お話として距離を置いて見られたらいいのですが、年少者が読んで親の職業はつまらないとか誤解しなければいいのですが、とどうでもいいことをふと考えました。
純粋さと残酷さを併せ持つキャラクタを作ろうするとどうしても二重人格的なものになってしまうのでしょうか。他の人格が取り付いた、といわれるほうがまだ受け入れやすいのですが、主人公の少女(といってもいいのでしょう)の普段の性格と戦闘時の性格の差が受け入れにくい。終盤ではそれらも混じっており、どこで何が切り替わるのかに多少無理を感じました。
話自体は「僕と魔女式アポカリプス」のように残酷な表記が多く、外国語で振られるルビも著者の形式としてなじんでいるようでした。包帯を巻いた少女の出番はあれで終わりなのでしょうか。だとしたら、悲しい話です。物語は当然主人公側から描いてあり、最終的に救われるのは彼らの側であることがほとんどですが、その一方で何の救いも無く消えていく存在もあることを書きたかったのかもしれない、とほんの少しだけ思いました。