神坂一 ドアーズ

ある日気がつくと部屋中の壁にドアが出来ていた。そのドアはそれぞれが別の世界へと通じている。今いる世界の"普通"が変わってしまったのは、別の世界でなにかがずれてしまったためで、それぞれのずれはわずかなものでも、少しのずれが集まったことで大きくなった。
そういえばスレイヤーズは完結したのでしょうか。まあ、それはともかく今回の作品は何でも出来そうな設定なので作者のちょっとした思い付きでもどんどん広げたり、自分の作品を皮肉るような表現をしたり、いろいろと楽しめそうです。始めは漫画化もされている「異邦人」シリーズ(と呼ばれているかどうかはわかりません)の主人公に似ているかな、と感じたのですが、途中から既視感は薄れていきました。どうしてそう感じたのだろう、と考えると、主人公が普段いる世界と別の世界へ移動したこと、そのときの描写が同じ作者によるものであることが思いつきました。ただ、「異邦人」シリーズの主人公は積極的に異世界を楽しもうとしていたのに対して、本作では戸惑いのほうが大きい。どちらも最初は望んで別世界に移動したわけではないのでキャラクタの積極性による違いかもしれません。
気を抜いて楽に読めばいい作品なのですが、"普通"が違うと戸惑うことも多いだろうなあ、とふと考えてしまう作品です。これだけ違うと喜劇としてみることが出来るし、あまり知りませんが舞台や映画でも共通認識の違いからおきる喜劇が描かれているものもあるでしょう。ただ、あまり目立たない程度の違いがあって、それが致命的なものだと、争いが生まれるのかな、とかぼんやりと考えます。同じものを見ていても違う名前がついて、同じもののはずなのにそこから得る情報が異なったり。たまには、今認識している"普通"はどの程度"普通"なのか考えてみるのもいいのかもしれません。