彩雲国物語

彩雲国物語―白虹は天をめざす (角川ビーンズ文庫)

彩雲国物語―白虹は天をめざす (角川ビーンズ文庫)

国を動かすことがどれだけ大変かと言うことは想像できてもなかなか実感としては感じにくい。感じにくいというよりも理解の範囲を超えているといってもいいかもしれません。今の日本の現状はさておいて、彩雲国物語では王とそれを支える官僚が活躍します。
王の子に生まれたから王にならなければいけないことはかなりの重圧であるはずで、責任を受け流していた劉貴は生まれながらの王とは行きません。そもそも生まれながらの何とかって本当にあるのかな、と思います。歌舞伎とか武術などの技術を受け継ぐ分野にしても、生まれ持った素質よりは環境の影響のほうが大きいのではないでしょうか。もしかしたら、生まれ持ったもので差があると考えると絶望してしまうからかもしれませんが。
今回はタンタンが地味ながら活躍したように感じます。秀麗のいいところは、自分が最善を尽くそうとしていたり、考えが足りなかったことに気がついて柔軟に対応するところを見せることで周りの人間を変えていくところだと思います。王は王に祭り上げられた、もしくは傀儡であることを自覚しつつその立場にいた王であったのが、王であるために何をするべきか、王とは何かを考える王になった。なるべく本気で動かないようにしていた人間が、本気になった。ひとりや二人ならともかく、何人も、しかも誰かの人生を大きく変えるほどの、ここまで影響する人はあまりいないのではないでしょうか。
ジュヴナイルであることから、政治などの仕組みは極力単純化されていたり、なんだかんだ言って前任が多かったり、超人が多すぎたりしますが、それでも興味深く読める作品です。どこまで続くのか、ちょっと予想が出来ませんが、作者は体調を壊さないようにして、ぜひ完結させて欲しい。あまり長く続くようでしたら、出来れば十二国記シリーズのようにイラストの無い版も作って欲しいところです。