坂木司 ワーキングホリデー

ワーキング・ホリデー

ワーキング・ホリデー

坂木司さんの小説にはあまり悪人が登場しない。いてもそれほど悪くないか、意見のすれ違いに過ぎない場合がほとんどだったと思う。たぶん、それほどの悪人はいないと考えているのではなく、人の良い面に視点を置いているからではないでしょうか。本作でも良いひとばかりが登場していて、多少物足りない(悪人が好きだと言うわけではない)のですが、たくさんいる小説家にこんなひとがいてもいいとは思います。
今回の主人公は元ヤンキーで、元ホスト、現配達業。突然11歳の子供が現れて戸惑うのですが、少なくとも主人公は30歳ぐらいでしょうか。若くてもそれより少し下ぐらいだと思います。あまりホストの現状を知らないので、それくらいの年齢が若いのか若くないのかが良くわかりません。話し方や態度からはもっと若いように感じます。あえて年齢の描写はしなかったのかもしれません。
話の内容としては「お母さん」と呼ばれる小学生とか、キャラクタはそれなりに面白いものの生かせていない部分が多かった。配達業の同僚とか、それぞれ別の個性(属性)をもたせているのにあまり生かせていないことが少し残念です。ただ、続き物としてみるなら今回は紹介の意味をこめてこの程度で良いとおもいます。続編があるかどうかは売れ行き次第でしょうか。あまりだらだらと続けるのではなく、引きこもり探偵シリーズぐらいの長さがちょうど良いかもしれません。