吉田アミ サマースプリング

サマースプリング [文化系女子叢書1]
 はてな界隈では有名人なのでしょうか、たまに巡回先から記事を読むことがある吉田アミさんの作品です。
 この作品を今の感性で書けることがすごいかもしれません。当時の記憶を掘り返して書いた作品のようですが、考えたり感じたりすることがいかにもその時代の少女であり、自意識が過剰な様子とかが描かれています。
 今は陰湿ないじめが多いのかもしれませんが、かつてはいかにもな不良が多かったみたいです。あまり学生時代のことは覚えていないのですが、誰かに言われると、そうだったねと思い出すことができます。それほど楽しかったわけでもなかったのか、楽しかったことまで忘れてしまったのか。吉田アミさんがこの本で書いてあることは、いやだった思い出がほとんどで、早く大人になりたいと思っていつつ大人になりたくないと思っていたことがわかります。正しくは大人になりたいわけではなくて自立した生活をしたかっただけなのでしょうけど。
 子供は生まれ持った環境に大きく影響され、吉田アミさんの環境よりもひどい人もたくさんいるでしょう。だからといって個人のつらさが変わるわけではなく、そのことはあとがきにも書かれています。誰かの苦しみは当人にしかわからないけど、他にもこんな思いをした人がいるのだと知ることで救われる思いもあるのかもしれません。
 正直、内容は陳腐なものといっても差し支えないものですが、それでも、同じような屈折した思いを持って生きてきた人は共感できるし、読む価値はあるかもしれません。思い返していることで多少美化されている部分や、大げさに書かれている部分もあるかもしれませんが、主観で書かれているので仕方がない部分だと思います。他の人がこの本を読んでどんな感想を抱くかはわかりません。値段の価値があるか、というとちょっと難しいところですが、彼女の現在の意見が書かれてあるブログと併せて読むと面白いかも、と少し思いました。