桜庭一樹 青年のための読書クラブ

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赤朽葉家の伝説」を読んだ時にはあまり気がつかなかったのですが、桜庭さんは時間の流れの中である部分を切り取るのが凄くうまい作家だなと感じます。今作では女性だけの世界である女学校が舞台となっていますが、単純に女性ならではの関係性を描くのではなく、少しひねってある辺りが面白い。学校が創設されてから百年間を描いてあります。近未来のことにはあまり触れられておらず、無理をしていないことにも好感が持てました。多くの人物が登場するのですが、スピンオフで●●の人生も描いてくれたらいいのに、と少し思いました。
赤朽葉家の〜もそうでしたが、時代を描いてはいるもののそれが必ずしも主題ではなく、その環境にいる人を浮き彫りにするための道具として扱っています。長い時を描いていると必ずどこかで自分の生きてきた世代と主人公の世代が重なるところが出てくる(少し外れることはあるのですが)ので、感情移入はしやすいかもしれません。主人公に感情移入しなくても、こんな感じの人がいたなあ、と思うことで物語に入りやすくなることもあると思います。
とても面白い作品でした。前時代風の話し方(「それは〜だよ、君」みたいな)も、ちょっとGosickヴィクトリカを彷彿とさせるものですが、ありえそうでありえなさそうなところが別世界であることをあらわしているようでとても良い。ライトノベルライトノベルで面白いし、ハードカバはハードカバで面白い。次はどのような作品を書くのでしょうか。楽しみ。