竹宮ゆゆこ とらドラ!5巻

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

とらドラ! (5) (電撃文庫 た 20-8)

これまでほとんど触れられていなかった大河の父親が登場します。この父親はいわゆる大人になりきれていない大人でした。芸術家とか、稚気を残したままの人もいるでしょうが、家族は大変だろうな、と思います。変にお金を稼ぐ才能があるほうが厄介なのかもしれません。
始めは父親のことを疑っていたのですが竜二が背中を押したことで大河は父親が戻ってくることを信じます。そのときに竜二は自分中心に物事を見ていたために肝心なことを見逃してしまう。それは良くあることですし、特に高校生と若いことからもそれほど攻めることではないと思います。それでも、頭に血が上って自分の考えに固執するのではなく、すぐに改めることができるあたり竜二は大物かもしれません。改めることはできるかもしれませんが、ひとりでそこに至ったことが良い。
友人のみのりは大河の父親の性格を知りつつも、そのことを竜二に教えず、ただ攻めます。それもまた、後々反省することができました。若さゆえの柔軟さなのか、彼らが柔軟な思考を持っているのか。
せっかくのミスコンとか文化祭の出し物とかが、大河の背景もあって素直に楽しめなかった面があります。無邪気に楽しんでいる人がいる反面、一見恐ろしげに見えたり能天気に見える人が悩みを抱えているのだなと言うことを知るためには良いのかもしれませんが。逆の視点から見れば、無邪気に楽しんでいるように見える同級生や先輩後輩の中にもそういった悩み、もしくは別の悩みを抱えている人がいるでしょう。当たり前のことであり、全く悩みの無い人なんて(おそらく)誰もいない。それでも、楽しむべきところは楽しむべきだと思います。でないと、世の中の楽しいことなんてほとんどなくなってしまう。
大河の家族関係もこれでけりがついたわけではなく、これからも向き合っていかなくてはいけない問題ですが、おそらく小説内で描写されることはほとんど無いのではないでしょうか。そろそろ竜二の父親も現れそうな気がします。すぐ次の巻で、と言うのは性急に思えるので、一冊あけたぐらいでしょうか。次回はお気楽極楽な内容が読みたい気分です。