森博嗣 イナイイナイ

イナイ×イナイ (講談社ノベルス)

イナイ×イナイ (講談社ノベルス)

 森さんの新シリーズ。Xだったでしょうか。新しい登場人物は美術大学に通う学生と転職したばかりの探偵社の助手です。探偵社を経営する椙田はあからさまに怪しい(これまでのシリーズを読んでいれば、ですが)人物で、名前が出てきたり電話で物語に参加はするもののほとんど登場しません。
 これまでの作品を読んでいたらある程度想像して楽しむことができる作品ですが、これ単体では今ひとつなのではないでしょうか。話の終盤に例の人物がちらっと出てくるので今後なにかしらの関連が出てくるとは思います。MoriLogAcademyで森さんが最近アンプの製作に請っていることが伺えますが、その成果が少し作品に反映されていました。もしかして音響が物語の重要な鍵なのかと思いつつ読んでいましたが、そうではなく、今後への振りだと思います。あと、珍しく少し読みにくい内容でした。読み手のせいかもしれませんが、なぜか読みにくかったです。これももしかしたら何かの試験(挑戦)なのかもしれません。
 新しい登場人物の小川はあまりこれまでの作品との係わり合いが感じられない人物像です。標準語を話すささきすばるさんかと思ってしまうような性格(といっても森さんの日記でしか彼女を知らないのですが)が少し面白い。これまでの仕事とまったく異なる分野で、今回は驚き役がほとんどでしたが今後は活躍するのでしょうか。真空管ともども期待します。あまりデザイナが誰なのかとかは気にしないのですが、本作の表紙デザインは好きです。