日日日 アンダカの怪造学 飛べない蝶々の鳥かご迷路

 安定したシリーズものの作品です。著者が若いことを知ってしまっているせいか、どうしてもどこか考えが熟しきっていないかな、と感じる部分もあるのですが、わからないなりにいろいろと書くこともいいのかもしれません。毎回毎回勝負事を考えるのも大変だな、と思うのですが、このシリーズでは上手く組み込んでいると思います。
 本作では何でもできてしまう少女と何もできない少女が登場します。お互いがお互いを求めているのでいい関係だったのだろうと思うのですが、互いのことを思いやりすぎて破綻してしまいました。冴木忍さんの作品でも何でもできてしまうが故に孤独を感じてしまうという登場人物が頻繁に出てきますが、本作に登場する少女は何でもできるけれどまだ発展途上の印象です。万能度が低いと言うか、まだ世間を知らないのかな、と思える程度の万能さでした。
 仕事はともかく、人間関係では何かができるとか、ためになるかで相手を選ぶのではなく一緒にいて楽しいかどうかで相手を選びたいものです。その楽しいかどうか、と言うのもともすればメリットがあるかないか、との話になってしまうかもしれませんが、そこまで難しく考える必要はないと思います。
 本作で第2部が終わりました。主人公が成長していく物語では、完全に成長が終わってしまう形で終わってしまうものと、これからも困難があるだろうけどがんばるぞ、という終わり方があると思います。この作品がどちらに該当するか予想すると後者なのですが、安定した面白さの作品なので今後も楽しみに読み続けようと思います。