清涼院流水 パーフェクトワールド

 刀語と同じ12ヶ月連続で刊行される講談社ブックスのひとつです。これを読むと京都のことがわかるし、英語も話せるようになるとのことです。
 下半身が不自由な青年、英数のもとにホームステイのため、アメリカからレイという青年がやってきた。大学で学ぶレイに日本語を教えると同時に自分自身も英語を身につけようと決心する英数。英数の父は他国語を話すことができるが、語学の習得にはコツがあった、という話。大雑把に言えばこんな感じの話ですが、設定としては上手いかな、と思います。レイに京都を案内することで読者にも京都を案内する。京都のことをほとんど知らない海外の青年なので説明が妙に詳しくなっても不自然ではないし、英語を話したり、日本語を教えたりしないとコミュニケーションが取れないため一生懸命話そうとする。それを物語にすると自然な形で英語の勉強を盛り込むことができます。ただし、これは読むだけではなくてやはり憶えていったり発音の練習をしてようやく少し身につくタイプのものだな、と思います。また、殆ど英語を知らない人のほうが素直に学習できるかもしれません。なんと言っても著者の学歴が学歴なので、学習方法としては信用してもいいのかもしれません。
 英数が話す英語はカタカナ英語で、できるだけ英語の発音に近い表記をしようとしていますが、これってどこかで見たことがあるな、と思いながら読んでいました。ちょっとして思い出したのですが脳研究で有名な池谷さんが確かカタカナ英語のススメをしていたと思います。頭がいい人の発想って似てくるのでしょうか。あまりまねをしたという感じではありませんでしたし、できるだけ簡単に身に着けようとすると同じ方向に向かうのかもしれません。編集の太田さんが言うほどのラストではありませんでしたが*1、今後も読もうと思える作品でした。あまり無い横書きの本なので慣れていない人にとっては読みにくいかもしれません。

*1:編集者としては凄く優秀なのでしょうがコピーライタとしては、うーん…。