ジョージ・RR・マーティン フィーバードリーム

フィーヴァードリーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

フィーヴァードリーム〈上〉 (創元ノヴェルズ)

フィーヴァードリーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)

フィーヴァードリーム〈下〉 (創元ノヴェルズ)

こんなに短期間に翻訳物を続けて読んだのは久しぶりな気がします。本作は吸血鬼が主人公の一人なのですが、1990年に刊行されたものとしては斬新な設定があります(今となってはよくある設定とも言えますが)。
物語の密度がある部分はものすごく緻密に、ある部分は思い切ってばっさりと捨てているあたりに特徴を感じますが、これが作者特有なのか海外ではよくあることなのかはわかりません。文章を頭の中でいっしょうけんめい映像化するほうなのですが、船室の描写が手すりにいたるまで細かく書いてあったり、情景描写がものすごく細かいところまで書いてあるのでイメージするのに時間がかかります。ここが翻訳物の面白いところであり、苦手なところでもあります。
上下巻なのでちょっと読み応えがありますが結構するすると読めるのではないでしょうか。吸血鬼と言えば美男美女がお約束ですが、本作は男性の登場期間が長いので女性の影は薄いかもしれません。人間の主人公は美形ではありません。かなりの割合で主人公が美形の日本の小説とはちょっと異なる印象でした。
細部までイメージできるような文章ではあるものの映画などにするには不向きな作品だと思います。頭の中の映像を起こしてきたのでしょうが、映画などにするための映像ではない、ということです。面白いのは面白いのですが、ここから盛り上がって欲しいと思う場面があっさりと終わってしまうことがたびたび合ったので若干消化不良なところがありました。これはライトノベルに毒されているのかなあ、と思わないでもありません。