アダム・ファウアー 数学的にありえない(上・下)

数学的にありえない〈上〉 数学的にありえない〈下〉
 特に購入するつもりは無かったのですが本屋さんをぶらぶらしていたらなんとなく表紙が目に留まり購入しました。値段を見ないで購入したのでちょっと高額なことにびっくりです。タイトルは原題がIMPROBABLEなのですが、いい日本語訳だと思います。
 ダヴィンチ・コードを引き合いに出しているように本作はさまざまな知識を簡略化して示すと同時にそれが話の流れに重要なポイントになっています。ダヴィンチ・コードでは歴史や宗教に関する知識で、本作では数学や物理に関する知識です。どうしても要旨を書くかたちになってしまうのでわかりやすいようなわかりにくいような説明になってしまいがちですが、高校生以上なら十分楽しめるのではないかと思います。もちろん物理や数学が好きな中学生でも。
 読んでいるときから思ったのですが上遠野浩平さんのブギーポップに衒学を足したらこの小説になるのではないでしょうか。上遠野さんにはライトノベル作家としてもう少し若い読者層を想定して書いているので過程があいまいですが、超常現象で片付けている部分を今ある理論で着地させようとするとこんな形になるのだろうなと思います。ページターナという点ではダヴィンチ・コードに匹敵するかもしれません。翻訳ものが苦手なのですがするすると読み進められたことからそう感じます。
 これまでに無い小説を書いたと訳者のコメントにありましたが、そこまでの印象は受けませんでした。何でもありのライトノベルを読みすぎでしょうか。映像化するには少々アレな部分があると思うのですが、世界中で売れているようなのでもしかしたら映像化されるかもしれません。面白い小説でしたが高額ですし、文庫化されるまで待っても良いかもしれません。