冴木忍 リュシアンの血脈 夜は去りゆく刻の聖域

冴木忍さんの作品には何もかもができるけど満たされない登場人物がよく登場します。当然、できないことがたくさんありますし、いろいろと懊悩するのでそんな人の感覚は肌では感じられませんが、なんとなく想像することができます。人を羨むこともなければ達成感もない人生ってきっと寒々としたものなのだろうな、と思います。手先が不器用で、それでも器用さが求められるときがあります。器用な人から見ればどうってないことでもそれまでできなかったことができるようになればうれしいし、しょぼくてもそれが達成感なのだなと思います。
本作でも何でもできてしまう人が登場しますが、対照的に何かしらのコンプレックスがあって、それを乗り越えよう、気にしないようになろうとする人たちが登場します。冴木忍さんの本が好きなのは、たとえ泥臭くなってもそれを乗り越えようとする登場人物がいることと、乗り越えられなかったとしてもそれを攻めないところです。もちろん、普通なら得をするはずであろう人物が不幸なところも面白いのですが。
次回で最終巻のようです。最近の冴木忍さんの作品は結構短めの作品が多いので、そろそろ卵王子ぐらいの長さでシリーズ物を書いて欲しいと思います。それより先に導士リジィオとかメルヴィ&カシムが読みたいです。