萩原麻里 トキオカシ

トキオカシ (富士見ミステリー文庫)

トキオカシ (富士見ミステリー文庫)

 タイムパラドクスがあったとしても世界はすでにそれを内包しているのではないか、と言う話。良くある話では、過去に戻って自分の親を殺害したらどうなるのか、などの話がありますが、きっとその時点から別の平行世界へとつながるのでしょう。今、この世界で過去を誰かが触っていたとしても"今の世界"には影響がないのだろうな、と思います。タイムマシンがあって、自分の過去に影響を及ぼすことができるとしても「もしかしたら幸せだった自分」が存在する世界を作った(導いた)だけで、今の自分は変わらないでしょう。
 本編では絶大な記憶力を持つ少年たちが登場します。その理由は作中で明らかになりますが、人間という記録メディアにも限界があるでしょうし、五感の解像度をそのままにずっと記録していけばいつか破綻するだろう、と思います。記憶力に減衰がないとしたら、衰えるのは解像度。視力が悪くなったり耳が聞こえにくくなったりするでしょう。画像サイズの大きいデジカメ画像をリサイズするようなものでしょうか。一度覚えてしまったものが忘れられないのなら、記録設定を変える方ですね。
 トキオカシは多数存在するようですが、この設定ですでに編集部を通ったと言うことはある程度の続編を期待してもいいのでしょう。今登場している双子はどちらも面白い少女でしたし、主役の方(双子のひとり)は感情の振幅が激しくてとても面白い。続編に期待です。