光原百合 銀の犬

銀の犬

銀の犬

 生きながらにして伝説の楽人となりつつあるオシアンと、ともに旅をするブランの物語です。これまでの光原さんの作品とは異なって異世界ファンタジィです。多少硬さがあるかな、と思いますが世界観はしっかりと出来上がっており、入り込むことができました。
 ブランは自称15歳ですが、作中何度も年をごまかしているのではないかと言う表現があり、言動からも実は少女なのではないかと思っていましたが最期まで明かされることはありませんでした。主人公であるオシアンは天上の音楽を奏でるにもかかわらず、楽人の主な技のひとつである歌が歌えません。歌えないだけではなく話せないのですが、これも最期まで話すことはありませんでした。それでも情景を思い起こしたり、故人を成仏させたり物質の性質を変えたり、その力は甚大です。今回は彼らの過去らしきものはあまり語られませんでしたが人気しだいでは続編が出るようですし、そのときに語られるのかもしれません。
 少々むずかしめの童話のような話なので、もしかしたら本に夢中になり始めた少年少女にいいのかもしれない、と思います。ただ、どちらかと言うと「時計を忘れて〜」のようなほのぼのミステリが好きなのでそちらも書いて欲しいところです。