三田誠 アガルタ・フィエスタ

アガルタ・フィエスタ!―てのひらに女王を! (電撃文庫)アガルタ・フィエスタ! (2) (電撃文庫 (1177))アガルタ・フィエスタ! (3) (電撃文庫 (1291))
 古代の高度な文明が滅んだのはさまざまな奇跡を起こす”秘宝”が原因だった。その責任を取るために人形となり永遠の命を得たイセリアは何千年も懸けて秘宝を回収している。回収のため、イセリアはそれぞれの時代で王となる人間を見定め、力を貸してきた。イセリアが現在で王に選んだのは、特に特徴も無い少年、八王子まどか。長く続いたイセリアの旅は現在で終焉を迎えることができるのか…。
 久々にあらすじを書いてみたりしました。特に特徴の無い少年が主人公になるのはライトノベルの王道ともいえるかもしれません。これまでの王はイセリアを利用することばかり考えてきたようですが、まどかはイセリアを一人の人間として扱います。もともと人間だったのだから当然といえば当然ですが、王となって統治することを考えている人間にとっては一人一人の人格を考えるよりももっと大きな”国”のことを考えがちなのかもしれません。そこはかとなく、全体を統治するものはそれを構成するものが一人一人人格を持った人間であることを考慮しなければいけない、と警鐘を鳴らしているようにも思えますが、考えすぎかもしれません。
 秘宝を使った戦いがこの作品のメインの一部ですが、新しい秘宝が出るたびに「〜は〜の由来となった。それとも〜を使用したからこそその名がつけられたのか」と言うナレーションはもう要りませんです。はい。中途半端に現代科学で説明をつけようとしているので、それは解ったけど、じゃあ、仕組みは?と思ってしまいます。仕組みなんてわかるはずはないし、わかっていたら作れるでしょうから(空想科学は別として)無理に説明しなくてもいいのに。浅井ラボさんの手法に似ています。あちらは事細かに説明があるので威力の裏づけとしてはいいだろうと思いますが。
 これも肩肘張らずに読むことができる点ではいい作品だと思います。イラストは最近の電撃文庫にありがちなイラストで、他の人との区別ができません。特に3巻では妹との区別ができませんでした。顔がそっくりネタはイラストレータにとって嬉しいのか悲しいのか。あまり速いペースで刊行されていないようなので、次回も読みたいと思います。