森博嗣 フラッタ・リンツ・ライフ

スカイ・クロラナ・バ・テアダウン・ツ・ヘヴン―Down to Heavenフラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life
スカイ・クロラから始まったシリーズ第4弾です。これまでの書影を並べているのはただ単に空の写真が綺麗だと思うから並べてみたくなっただけです。前回はそのためにわざわざ3冊分まとめて感想を書きました
このシリーズを読むと、BGMのない世界を想像します。明け方の静けさ、澄んだ空気、透明な光、永遠。今はどこに行っても音楽が聞こえたり、テレビが点いていたりしてあまり静寂を感じる機会はないかもしれません。この小説でもエンジン音や会話などは当然あるのでしょうが、どことなく静謐さが感じられます。その感覚がとても心地よい。記憶の引き出しにしまわれていた、もしくは想像の中で広げていた、静かな場所での美しい風景が喚起されます。
少し内容に触れるので以下、隠します。
主人公の無常観もキルドレであるからという理由が大きいでしょう。本作でキルドレが偶然の産物であり、今後増加することはありえないことが明らかになりました。また、キルドレでなくなることも方法としてはわかっていることも判明しました。年をとらない、死ぬことがないことから逆に死に対して鈍感になってしまったキルドレたち。死を迎えることができるといわれても「はいそうですか」と受け入れることはきっと難しい。きっと、仲間も次第に減っていくでしょう。老衰はなくとも、生命力が強くても命を失うことはあります。ほとんど別の種として扱ってもおかしくないキルドレですが、種の総体が減少したとき、その他大勢の属する世界に入ろうとしないでいられるのか。残り何冊かわかりませんが、きっとこれらの点が描かれるのではないかと想像しています。想像している、というよりも期待しているのかもしれません。