古屋兎丸 ライチ光クラブ

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

東京グランギニョルが舞台で演じた作品を古屋兎丸がコミカライズしたもの。場面の見せ方など舞台を意識しているのがよくわかります。その見せ方もうまい。まるで舞台を見ているよう、とまでは言いませんが。設定も実際にはありえないだろう、とは当たり前の話で、舞台としてはこんな設定が向いているのだろう、と思えるものでした。ライチを演じていたのが嶋田久作と聞き、なるほどと思う反面、彼以外には演じられないだろうなとも思います。あまり関係のない話ですが、嶋田久作はどこに行っても何を演じても怪演と評されるのが面白いです。彼にしかできない演技であることが伝わります。
内容では少年たちの奇妙な力関係が面白い。特別であることを自覚する少年、特別になることを期待している少年。幼い頃にしかなしえない力関係が研ぎ澄まされた描写で描かれています。あと、舞台でやれば映えるのだろうな、と思える掛け声(というと格好悪いように聴こえてしまうかも)も面白いですね。ライチ、ラライチ、ララライチとか。ああいった共通言語のようなものは結束を高めるためには重要なのかもしれません。
作画はさすがに描き切る自信が付いたというだけあって、古屋兎丸の現時点での最高作品です。丸尾末広の耽美さを継承しつつ古屋兎丸の作風も失っていない作品だと思います。繰り返しになりますが、魅せ方、構図、ストーリィ展開、そして終わり方とすべて舞台演劇らしく、なおかつ漫画と言うメディアでしか描ききれないように古屋兎丸の中で見事に消化され、別次元に昇華した作品です。あまり部数が出る作品でもないような気がしますので、多少なりとも気になった方は今のうちに読んだ方がよいと思います。