山形石雄 戦う司書と神の石剣

戦う司書と神の石剣 BOOK4(集英社スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と神の石剣 BOOK4(集英社スーパーダッシュ文庫)

 これまでの戦いで要所要所を締めてきたミレポックが謎の人物であるラスコール・オセロを探すために奔走する物語。死後は本になってしまうと言う魅力的な設定を生かしてどんどんと続編を刊行しています。今回は暗躍する人物がいく人か登場しますが、若干、帯のあの人とかぶってしまっているのが残念と言えば残念。でも、もともと珍しい設定でもないので特に物まねと言うわけではないのかもしれません。
 まじめなミレポックと、飄々としたマットアラストの対比がとても楽しい。ミレポックのまじめでかわいらしい部分が強調されるとともにマットアラストの、嘘の中に隠されたやさしさもわかりやすく伝わってきます。ミレポックはイメージどおりのイラストなのですが、今回登場した敵のイラストは若干イメージと異なります。なんとなくですが、黒髪のミレポックのような姿をイメージしたのです。まあ、それは勿論作品を楽しむ上で問題となる部分ではありません。
 この「敵」の能力は、ハミュッツ・メセタの凄さを際立たせるのに役立っています。能力の質と量が、敵を圧倒するのですね。なかなか面白い話です。この敵は「理解されない事が願い」である人物にかかわってくるのですが、それもまた逆説のようで面白い。
 帯の人の影響が強く、戦いの場面が表に出てきがちですが、実際はいろんな対照的なものを描くことで輪郭を際だたせる方法が優れていると思います。また、主人公が独りきりではなく、登場人物に対する焦点の当て方なども好感が持てます。まだ他のシリーズを読んでいないので、ある意味ひとつの作品しか読んでいないとも言え、まだまだ実力が未知数な部分も残されていますが、続編が楽しみな作家の一人となりました。あとは別シリーズ(外伝などではなく)を期待しています。