菅浩江 おまかせハウスの人々

おまかせハウスの人々

おまかせハウスの人々

 菅さん得意のロボットもの。今回は短編集でした。ドギーのときもそうですが、近未来をモチーフにした作品では突出していると思います。それぞれに感想を少しずつ。

  • 純也の事例

 純也が最後にあることをしたときの感動はぜひ味わって欲しい。今、現在の精神状態もあるのでしょうが、少し泣きそうになりました。佳作です。

 人の心は複雑で、今の技術では表層を推し量ることすらできないでしょう。機械で人の心を探ろうとすることは、浅はかかもしれないけれど、切実な願いかもしれません。

 「孤独や寂しさは、他人の目で判断できることではない。飽くまでも本人の自覚の問題だ。一人ぼっちでも楽しく遊べる人もいるし、一人になってようやくほっとする人もいる」この言葉はいまだ一般的ではないのだろうな、と感じます。自分の価値観がすべてで、ほかの人間も必ずそう感じているのだと思い込んでいる人たちに伝えたい言葉です。
 見えないからこそ思い入れがある、と言うこともあるのでしょう。近い将来ナノテクノロジは現実化し、それによって救われる人もきっとたくさんでるでしょう。技術は人の命を救うけれど、精神まで影響するようになると少し怖いです。

  • フード病

 近未来に限らず今でも絶対安全な食品などはないのかもしれません。スーパにトレーサビリティの読み取り装置があるのは意外と便利かも。今でも牛肉などは産地などを調査することができるのかもしれませんが、手間なので実際にしている人は少ないでしょう。手軽になることで疑心暗鬼の度合いも上がるかもしれませんが、簡単に調べられるほうがいいような気がします。主人公の女性は反撃せざるを得なかったのか。恨みの連鎖が繰り返されることは、本当は避けたい。でも、主人公の行動を非難できない自分もいます。

  • 鮮やかなあの色を

 主人公があるものを取り戻していく過程を清々しく読めなかったのはなぜなのだろう、と考えました。おそらく、その後の変化が感じ取れたからだと思います。ただ単に読書に慣れていたから先が予測できたのか、それをにおわせる文章があったのかはわかりません。日を置いて再読するかも。不安は些細なことがきっかけで取り除かれることもあるし、増幅することもある。無神経なほうが世の中は生きやすいだろうな、と思います。感受性が強いなどと言うつもりはありませんが。

  • おまかせハウスの人々

 この家欲しい、と書けばモニタに当選すると言うのをはてなでやってくれないでしょうか。洗濯も食事も用意してくれるのは便利だろうな、と思います。引きこもりの男性に関してはこれほど上手くはいかないでしょう。短編にまとめるために強引に展開したように感じました。でも、それはこの作品の瑕疵ではありません。終盤、数ページで描かれた世界を見せるためにこの物語は描かれたのでしょう。幸福感は、いろんな方法で感じられるものですね。