田島昭宇×大塚英治 多重人格探偵サイコ 11巻

多重人格探偵サイコ (11) (角川コミックス・エース)

多重人格探偵サイコ (11) (角川コミックス・エース)

 小林洋介が逮捕される以前、すでに学窓は人格をプログラムする技術を確立していた。集団自殺を誘発するルーシー・モノストーンの歌声。ルーシーの生まれ変わり。事態はすでに動いていた。体を真っ二つに割られた猟奇殺人が多発し、犯人は鏡男と名づけられる。その鏡男を捜す少年。彼の望みは、鏡男に二つに切り裂かれることだった……。
 なんだかんだ言っても田島昭宇の絵は素晴らしい。スクリーントーンを多用しない彼の絵柄はとても好みです。最近似た絵柄の漫画かも増えてきて、おそらく彼のアシスタントをしていた人物か、影響を強く受けている人物だと思うのですが、まだまだ実力には開きがあるように感じます。彼の絵を極力再現するためか、紙の質も上質ですし、絵を見るだけでも十分価値を感じています。
 大塚英治さんのほかの作品と絡めた登場人物がでてきています。℃とか大江公彦とか。それまでも犬彦とかでてきてましたっけ。刊行に間が空きすぎているのでもはや全体像はつかめなくなってきていますが、なんとなくでも十分かもしれません。いろいろとたたかれることの多い大塚英治さんですが、漫画の原作者・プロデューサとしては優れていると思います。森美夏さんとの共同作品もそろそろ出して欲しい、と思うのですが、進行中でしょうか。雑誌は殆ど追わないので、単行本が本屋さんに並ぶまでわかりません。それほど熱心な読者ではないのでこれで十分だと思うのです。
 これまでもあったのかもしれませんが、田島昭宇さんの、広角レンズを通してみたような背景が本当に素晴らしい。素晴らしい、というか感心するというか。どこまでが彼自身の絵なのかはわかりませんが、細部まで描かれており、特に光と影を繊細に描いてあるあたりにどうしようもなく惹かれます。あえて発禁となるような構図を選んでいるのか、ただの好みなのかはわかりませんが、一昔前ならとても出版できない絵もたくさんあると思います。これが挑戦ならやめて欲しい(発禁されることが勲章のひとつのように思っているのならばやめて欲しいと考えている、ということ)のですが、猟奇殺人とその背景を描いている作品なので致し方ない部分もあるとは思います。対象年齢はきっとかなり下のほうまで含んでいると思うのですが、大丈夫でしょうか。
 今はまだ伊園姉妹の役回りがわかりませんが、次第に明らかになるのでしょうか。いろいろな感想のところに書いていますが、ぜひ、きちんと完結させて欲しい。未完の大作もあるかもしれませんが、作品は完結してこそ作品だと思っています。