東野圭吾 容疑者Xの献身
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/08/25
- メディア: 単行本
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新年最初に読了した本は、このミスなどで評判が良かったらしい東野圭吾さんの作品です。明晰な頭脳はこんなことにも使えてしまうのか、と思ってしまいました。ミステリでありながら純愛ものの作品でもあります。少し内容に触れますので続きを隠します。
帯には、
「これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。いやそもそも、この世に存在することすら知らなかった」
とあります。偶然だったのですが、読了するまで帯を見ませんでした。ラッキィだったと思います。帯の文は、確かにそのとおりかもしれません。石神がどうしてそこまでの愛情を抱くようになったのかは、とりあえずですが、本編に記されています。でも、それだけでここまでの愛情を抱くことができるのか、と少し疑問に思いました。思い込みが激しい人物かもしれないと言う印象も受けました。頭脳が明晰な人物とは得てしてこのように悟りを開くような境地に至ってしまうのかもしれません。
トリックは最後までわかりませんでした。途中で、もしかしたらと思ったのですが、その場合、あらかじめ提示されていた条件が説明できなかったので可能性として却下していました。終盤を読んで一応納得したのですが、納得できない部分があります。そこを書いてしまうと読む楽しみが減少してしまうかもしれないのでここには書きませんが、読了後読み返してみてもやはり納得行きませんでした。伏線の張り方やその伏線が消化されていく過程はさすが、と感じます。
それはともかくとして、比較的淡々と話が進んでいくため、石神の愛情の深さは最後まで伝わってきにくいかもしれません。でも、最後まで読めば気持ちが動かされる部分があるのではないか、と思います。シリーズものの作品でなくとも良かったのではないか、と一瞬思いましたが、湯川の頭脳の明晰さやそれに対する石神の明晰さをくどくどと書く必要が無いためこの厚さにとどまったのかも、と思います。今回は科学関係の小ネタが無かったので、これまでのシリーズを読んでいない読者には湯川の明晰さが少し伝わりにくいかもしれませんが、未読の方でも十分入り込める作品でしょう。ただ、少しばかり周囲は褒めすぎかな、とも感じます。