滅びのマヤウェル その愛がナイフでも

 男の振りをしている高校生、ユーキは全ての神格能力を無にできる能力を持っている。神格能力者の頂点に立つ真綾は、先日の事件でユーキに別れを告げたはずだったが、唯一の友人ともいえるユーキと別れがたく、舞い戻ってきた。ユーキと生活することで能力が低下している真綾を、もう一人の天才能力者である黒子が訪れる。美しさを兼ね備えた黒子にユーキは魅了されるが、同性ということもあって憧れにとどまっていた。黒子が真綾を訪れたことには理由があった。
 前作の感想はここです。会話が面白い作者なので、気軽に読む分にはいいだろう、と言うことで購入しました。今回も面白かったです。前作の感想でも書きましたが、できれば続編ではなく違う設定で書いてほしかったです。好評だったのかもしれませんね。主要な登場人物がほとんど女性なので、もっとインパクトのある男性に登場してほしいところです。早くも能力のインフレがおき始めている印象ですが、この物語をどう収束させるのでしょうか。続編ではないほうが良い、と書いたのは、すでに頂点である能力者が出てきているので、今後話を広げるにしても、シリアスな展開は難しいかも、と言う印象だったからです。案の定、というと少しかわいそうかもしれませんが、予想通りでした。さて、これからどうするのかが見ものでしょう。会話の秀逸さだけでは乗り切れなくなってしまいました。できれば早くこのシリーズは終わらせて次の物語に着手してほしいところです。
 そうですね、この話を纏めるとするなら、真綾が男になって、ユーキとくっついてしまうパターン。最高能力者ですので、その程度(といっても性別が変わるなんて大変な出来事だと思いますが)の変化は可能でしょう。もしくは、どたばたコメディのまま終わってしまうこと。この場合、真綾が他の能力者に手を出さずにいられる方法を考えなければいけません。この二つが簡単に予想できるパターンでしょうか。もう少しアクロバティックな展開ならば、実はユーキはもともと男性で、ある能力者によって女性にされていたけど、真綾でさえそのことに気がつかなかったとか。この場合さらにインフレが起きそうなのでできればやめてほしい展開です。
 今後の予想はともかく、本作の感想としては、ユーキがあまりにも身内ひいきをしすぎですね。どのような理由があれ、殺人は殺人で、簡単に許容してもいいものではないと思います。正義である、との理由はとても不安定なもので、何を持って正義とするかはとても難しい。そして、正義であるからといって簡単に悪を裁いてもいいものでもありません。そのあたりは、著者は深くは考えていないような印象を受けます。
 でも、それほど真剣に考える必要は無いかも知れません。娯楽作品としては上質だと思いますし、値段の価値は十分にあるでしょう。次回作がどのような作品になるのか、予想を超えてくれたらそれはそれで楽しいです。続編を楽しみにしています。