凛野ミキ 光

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 優しさという欺瞞で自らを装う上嶋。その上嶋に憧れていて、周囲に溶け込もうとしているがちゃらちゃらした同級生に軽く憤りを覚えている恩田。マイペースで自分中心に物事を考える凪央。同じ高校に通う彼ら三人の腹部にある日不思議なあざができる。その痣は彼らが星の宿命に目覚めたことを示すしるしだった。時間が止まった世界で動くことができるのは星の命運に関与している人間のみで、惑星の宿命を負う彼らのほかに星座の宿命を背負う者がいる。止まった世界では特殊能力が使える彼らは戦う運命にあった・・・。
 細かい設定は実際に読んでもらわないとわかりにくいかもしれません。少し、ではなくかなりおかしい人間が登場する作品で、どのような人がこの作品を書いているのか少し気がかりなほどです。相手を思いやっていると誰かに思ってもらいたい上嶋は直接手を下すことができないものの多くの人を見殺しにします。自覚していないと自らをごまかしている上嶋は見た目はいいのですが、とても醜い性質で、とても感情移入できるキャラクタではありません。恩田は上嶋に憧れている自分に酔っていて、他人を踏み台にすることや、上嶋を助けると言うシチュエーションを作るためには手段を選ばず、回を追う毎に顔が醜くゆがんできて、精神のゆがみをそのまま表しています。比較的まともに思える凪央は、他人を殺害しているにもかかわらず能天気かつマイペースです。彼は能力によって性格がそれほど変わるわけではないのですが、人の命をあまり重たく考えていないことが言動の節々に表れており、そんな彼がまともに見えるこの世界がとてもおぞましく感じられます。
 人は自らを特別だと思ってしまうとこれほどまでにゆがんでしまうのでしょうか。決してそうではない、と思いたいのですが、ありえないと言い切れないあたりが恐ろしい。現在3巻まで出ており、登場人物も増えてきていますが、全てどこかがおかしくなっています。残酷であり、私利私欲にまみれて、自分勝手な彼らは現在の人間を強烈にデフォルメした姿かもしれません。感動は得られないでしょうし、普段できない行動を彼らが取っていることによるカタルシスも得られないかもしれません。でも、一度読んでしまうと目を離せない作品であり、どのような結末を迎えるか最後まで追いたいと思います。