三原ミツカズ 毒姫 1巻、2巻
- 作者: 三原ミツカズ
- 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
- 発売日: 2005/12
- メディア: コミック
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毒姫になるために拾われてきた子供たちは貧しさからそのままでは育つことが出来ない子供たちです。彼女たちはそのまま死んだほうが幸せだったのだ、と言うことは出来ません。死んでしまえば何も出来ないし、生きていたら何かが変わるかもしれないからです。それでも、触れた相手を殺してしまう彼女たちに普通の恋愛など出来るはずも無く、毒に慣れた男性を探すほかはありません。それでも、生きることをあきらめない彼女たちの強さが好ましく感じられます。
他人に触れることが出来ないのはマイダス王も同じですが、彼は望んでそうなりました。彼がすぐに他人と触れ合うことが出来ないことの寂しさに気がついたように、一人であることはとても寂しいことです。特に、周りにたくさん人がいればなおさらでしょう。彼女たちの気持ちがわかるとはいえません。でも、大勢に囲まれた中で孤独を感じたことがある人ならば、少しだけでも、彼女たちの寂しさを想像することが出来るのではないでしょうか。
陰謀渦巻く王族たちのやり取りは、政治家を想像させます。実際にはこれほどわかりやすいものではないでしょう。ここに出てくる若者たちはいずれも権力を望んではいません。誰かの望む物であったのか、残されたものを守るためなのか、死者の尊厳を守るためなのか、その理由は様々です。誰もが望むような権力や美貌を持っていたとしても自分が望むような生き方が出来ないことは不幸かもしれません。何ももたない身ですが、それなりに望みどおりの人生を歩んでいます。権力も美貌も無く、毎日の生活や政治に不満もありますし、思い通りにならないことも多いのですが、多少なりとも選択の余地があることはとても幸せなことかもしれない、と感じました。
毒姫の感想は以前書いたかな、と思っていましたが書いていなかったようなので2冊まとめての感想です。相変わらず人の悲しさと強さを描くことにかけては天下一品です。刊行にかなり間が空いているようですが、急がずにゆっくりと待ちたいと思います。