久美沙織 原作/森薫 エマ 2巻

小説 エマ(2) (ファミ通文庫)

小説 エマ(2) (ファミ通文庫)

 ジョーンズと水晶宮に出掛けたエマ。みるもの全てが新鮮で、これまで狭い世界に生きてきたエマは感動する。ジョーンズの好意も伝わってきて、記憶に残る一日となった。幸せな気分のエマだったが、雇い主であり、エマに教育を施してくれたストウナーが病に倒れ、これ以上街にいることが出来なくなった。最後の別れをつげにジョーンズ宅を訪問するが、エマはそこで改めて地位の違いを自覚し、ジョーンズがエマに対して訳隔てなく接していてくれたことを知る。
 一巻に続いて原作「エマ」の内容を補完するだけではなく、独自に付け加えられた内容も合って申し分ない作品でした。今は、様々な博物館があり、実際にその場にいけないとしてもウェブ上でも情報を検索すれば大概の公式サイトが見つかります。だから、一つ一つの情報に対して感動が薄れているかもしれません。エマのすごす時代では画期的な水晶宮です。きっと様々な人々の好奇心が満たされた、素敵な施設だったのだろうな、と想像します。久美沙織さんの細かい描写と森薫さんの絵によって想像に必要な要素はは十分に満たされて、まるでその場にいるかのようです。
 孤児だったエマはストウナーに見初められ、教育を受ける機会を手にします。知識や教養を求める者と与える者の、奇跡のような美しい関係。今の日本では与えられることが多くなって、知識に対する飢えを感じている人はあまりいないのではないのでしょうか。必要の有無を問うているのではなくて、物事を知ることは本当に楽しいはずです。その機会が失われることはもしかして不幸なことかもしれません。もちろん、お酒が飲めないと不幸がられる様に、知識を得ることを楽しめないから不幸だと決め付けるつもりはありませんが。
 3巻以降の予定は無いそうで、とても残念です。久美さんの子育てが忙しいのでしょうか。それでも期待してしまうのは読者の身勝手かもしれませんが、それでも楽しみにしています。