さそうあきら 神童

神童 (1) (Action comics)神童 (2) (Action comics)神童 (3) (Action comics)神童 (4) (Action comics)




 うたは音楽に関する天性の才能を持ち、母親の英才教育によって才能が伸ばされつつあった。でも、うたは音楽に対して執着はなく、野球に夢中になっている。八百屋の息子、和音(カズオ)は幼い頃憧れていた少女がピアノを習っていたことからピアノを始めたものの、受験を目の前に自らの才能に疑問を抱いていた。そんな和音がうたと出会い、同じピアノを弾いているはずなのに、あまりの音の違いに愕然とする。歌に触発された和音は、もともと耳が優れていたこともあってその才能を開花させ始める・・・。
 耳が良くない(センスがないということです)こともあって、この手の才能の持ち主にはあこがれます。のだめカンタービレもそうですが、もともと音が出せない漫画という媒体で音楽を描くことはとても難しいことです。でも、それを描ききったこの「神童」は名作だと思いますし、まだ完結はしていませんが、「のだめ」も佳作だと思います。世の中にはいろいろな音に満ち溢れているはずなのですが、感度が鈍いためあまり感じることが出来ません。作中、うたと和音はボートに乗って、オールに耳をつけ、魚の話している音を聴きます。物語の冒頭に描かれている場面ですが、これはもう想像もつかない世界で、限られた一部の人間しか感じられない世界だと思います。これで物語への移入は完璧。あとは世界を堪能するのみです。
 全4巻と、話の量としてはそれほど多いわけではありませんが、さそうあきらさんは限られた紙面の中で密度の高い作品を描く作家なので不満はありません。途中でうたの認められていく場面があまりに急ですが、端折っているというよりも、本当に才能があるのだな、と感じます。物語は急転し、ある結末を迎えるのですが、まだ幼いと言ってもいいうたの人生はこれからですし、未来に希望を持てる終わり方は好ましく思えました。
 これも、荷物の整理で手放してしまうのですが、これを受け取った子も何か感じたら嬉しいな、と思います。