あさのあつこ 福音の少年

 ある街で起きたひとつの事件。それは、アパートが全焼し、住人全てが焼死するという、ありふれた事件だった。その事件を追うジャーナリストが更地になった事件現場を訪れる。ちょうど同じ時、事件現場には二人の少年がいた。彼らは被害者である少女の高校の同級生だった。
 確か帯にはこの物語が書きたかった、とあったはずですが、それほどの力作とは思えませんでした。力が入りすぎていたのかもしれません。高校生の少年少女が登場してきますが、熱いと思えば冷静だったり、少女の行動原理が良くわからないまま話が進行したりで、あまり感情移入することが出来ませんでした。現実にはわからないままのことが多く、そのままにしておくか、想像で補うしかありません。そして、現実のように判らないことは判らないままに物語を終えようとしたのかもしれません。
 ご都合主義のような終わり方で、消化不良だった方も多いのではないかと想像します。もしかしたら続き物なのでしょうか。だとしたら一冊で評価することは出来ないと思いますが、この終わり方では続編を読むかと言うと答えは否、です。バッテリーの評価が高い著者だっただけに少し残念でした。