石田衣良 東京DOLL

売れっ子ゲームデザイナの相楽一登、通称MGはコンビニでレジを担当している女性、水科代利(ヨリ)に惹かれるものを感じ、現在製作中のゲームのキャラクタである妖精のモデルになるよう依頼した。彼女には鑑別所から出所してきたばかりの恋人がいて、MGに、彼女に手を出さないよう忠告する。東京の各地で撮影をするMGとヨリは撮影を通じて交流を深める。
 石田衣良さんの悪いところが前面に出てしまった作品。石田衣良さんの都会らしさやクールなところは作品に合うとものすごく洗練された文章に感じるのです が、今回はいまひとつでした。"世間的には成功した俺だけど、何か満たされないものがある"と、ナルシストが何か言ってますよう、とうんざりしてしまう内容。ヨリは何を背景にしても自分が中心となる、強烈な個性を持った女性のようですが、まったくイメージできません。だって、人形をイメージしてモデルにしたっ て最初に言ってたじゃないかー。もしかして景色にそぐわないから突出して見えたのでしょうか。それがモデルとして優れているのかどうかはわかりませんし、もう何がなんだかです。 アキハバラ@deepで調子に乗ってしまったのか、ゲーム業界が舞台でしたが、これは大失敗ではないでしょうか。そもそも石田衣良さんのよさはコミュニ ケーションのとり方と言うか、人と人との距離感が良いのであって、どちらかと言うと設定はその引き立て役だと思います。今回ももちろんそうなのです が、MGが開発中のゲームにまったく魅力が感じられないのが、話に入り込みにくかった原因だと思います。石田衣良さんは決してデジタル関係に弱いわけでは ないと思います(ブルータワーに出てきたココとかは結構好きです)ので、次回作に期待したいところ。