[日記]

 冲方丁さんが中心となって文芸アシスタント制度を作られたようです。詳しくはまだ調べていませんが、昔の職人の徒弟制度のようなものでしょうか。それとも音楽で言うバンドのようなものでしょうか。漫画家にも大抵アシスタントはいるでしょうし、小説家にもアシスタントがいても良いかもしれません。ただし、漫画はアシスタントがいることが前提となっている文化で、なおかつアシスタントが手伝っているのは機械的な作業(それももちろん技術に差が出てくると思います)に過ぎないと考えています。当然ストーリィやカット割りなどは著者が書いているのでしょう。つまり、漫画は徒弟制度のスタイルでアシスタントを"使っている"もしくは"育てている"と言うことになります。
 さて、小説に当てはめるとどうでしょうか?小説で核となる部分はストーリィ、構成、キャラクタ、装丁のデザイン(これは専門家かな)などでしょうか。このうち、代表者が担当しなければいけない(メインの部分である)ところは、ストーリィと構成だと思います。逆に言えば、手伝える部分はキャラクタやその他の設定(超能力とかの特殊能力、世界観)ぐらいではないかと思います。文体をコピィすることができるのか、と言われたらできないことは無いだろうけど、再現性に乏しいと思うのです。たとえ一つ一つの取るに足らない短い文章でも、その作家の個性が出てくるのではないでしょうか。
 これは漫画よりも小説を多く読んでいるから出てくる意見かもしれませんね。小説で難しいことの一つに多面的な視点を持つことが挙げられますが、登場人物ごとの視点で物語を進める場合ならば、分業も可能かな、と。その場合はエピソードや建物、人物の配置など細かい設定をあらかじめ決めておかないと後々齟齬が生まれそうです。その苦労を考えると、あまり文芸アシスタント制度というのは合理的な制度ではないのかな、と言うのが現在の感想です。悪くすれば、無名の方からのアイデア搾り取る組織となりかねません。いま、田中芳樹さんが原案を出して他の作家が小説を書いています。これは意外と(でもないかも)いい案ではないかと思います。漫画で言う原作者ですね。田中芳樹さんのアイデアは優れているにしても、なかなか終わりまで続けられない。加えて遅筆であると言うことが大いに関係します。田中芳樹さんの原案を元に自分の文章で小説を書き上げ、(本好きという狭い世界だけれど)認定されたなら、自分の世界観を前面に持ってきたオリジナル作品に手がければ良いと思います。読んでいないので判りませんが、実際、そうなのではないでしょうか。そのころには固定ファンもついているのではないかと思います。一から作ることが苦手でも、広げることは得意だ、と言う方には良いかもしれません。
 と、ここまで書いてから調べたのですが、文芸アシスタント制度というのはどうやらセミプロの実力を持った作家に創作のやり方を指導するようです。将来契約することを約束したカルチャ・スクールのようなものでしょうか。