吉田茄矢 Bud×Buddy 12月の銃と少女

 連邦本部のエリート刑事であるはずだったホンダヒロユキは上司の娘に気に入られるものの、娘にはよりよい縁談を、と考える上司に嫌われ、左遷される。左遷先のアトランタでホンダが出会ったのは爆弾魔の少女、レッティーと元軍人の少年、ウォルター。ウォルターはなんとホンダの上司であった。兄弟が濡れ衣を着せられたと訴えるレッティー。しかし自身が爆弾まであることからまるで説得力は無く、彼女の憤りは空回りする。そして(冤罪?)事件は現在へと繋がりを見せる・・・。
 読んでいてどうも感情移入できませんでした。設定は悪くないし、文章もそれなりに読みやすいし、一体なぜなのでしょう。読後考えてみたところ、次の理由ではないかと思いました。
 主人公の性格を形成した過去なり何なりが出てこないこと。それはホンダだけでなく、ウォルター、レッティーもそうです。いきなりこんな性格ですよ、と提示されてもキャラクタ設定を見せられているようで人物の造形がどうも薄っぺらい。だから、各登場人物が持つ能力にまるで説得力が無い。 他にも怪我を甘く見積もりすぎだとか、犯人の動機が適当だとかいろいろとありますが、全てはキャラが薄っぺらいことに起因します。
 でも、一箇所だけ気に入った部分がありました。この会話です。

 「そんな一文の得にもならんことを・・・」
 「そういうの大好き」

 あとがきを読むと、良い人のようですし、友達になりたいタイプの方ですが、内容は著者の人格とは直結しません。イラストも綺麗は綺麗なのですが、どこかで見たことがあるような絵で、本文のイメージとのずれが大きいように感じました。続編が出ていて、まとめて買いましたが次巻ではもう少し各キャラクタが掘り下げられているのでしょうか。何も変わっていなければ残念ですがここで終わりにしたいと思います。