時雨沢恵一 キノの旅 




 話す二輪車エルメスと旅を続けるキノ。この世界にはいろいろな国があり、旅の目的はそれを見て回るためだ。旅で得るものは有るかも知れないし無いのかも知れない。それでも旅を続けるキノとエルメス。それぞれの国は何かしらの偏りがあり、比較的ニュートラルな二人は国の暗部に気がつきつつも見逃したり、問題提起をしたりしつつ次の旅へと向かう・・・。
 設定が面白い作品です。これだけ長く続いているのに犬が話そうが単車が話そうが全く説明無し。でも、それでいいと思います。しかしエルメスはガソリンが切れたら話せなくなるのでしょうか。読んでいる時はとても面白く読んでいるのですが、あまり印象に残らない、と言う点はむしろ美点で、何度も繰り返し読むことが出来る作品なのかもしれません。

 始めの何冊かは面白く読めましたが最近マンネリがちな印象です。もともと一話一話が短く、絵本にしたほうがいいような内容ですので、そろそろ小説と言う形式から離れてもいいのかもしれません。キノとそのほかの人間関係を忘れてしまいました。そもそもここで語られる”キノ”が同一人物なのかどうかすら怪しいと思っているのですがどうなのでしょうか。
  主要人物を除いて殆どの人物が深く考えようとしない、受動的な性格なのは著者の何かしらの皮肉でしょうか(穿ち過ぎかもしれません)。この著者の作品はこれしか読んでいないので、他の作品が多くなりすぎて手を出しにくくなる前に読んでみようかな、と思います。