日本橋ヨヲコ G戦場ヘヴンズドア 2巻

G戦場ヘヴンズドア 2集 (IKKI COMICS)

G戦場ヘヴンズドア 2集 (IKKI COMICS)



 合作で応募した作品が佳作を受賞した鉄男と町蔵。授賞式で鉄男はついに大蔵に出会う。鉄男が漫画を書き続けていたことに喜びを隠せない大蔵。一方息子の町蔵のことを蔑ろにしてしまう。今回受賞した作品は優劣で受賞した賞が決まったわけではなかった。受賞者全員に課題を与える鉄男の父、阿久田鉄人。ただし、合作は許さないという条件も提示された。すれ違いながらも前に進んでいく鉄男と町蔵。ある種の狂気に囚われた彼らの進む先は・・・。
 隣の芝は青く見える。そうは解っていても自分の持っていないものを見せ付けられると嫉妬せずにはいられません。普段は抑圧している大きな喪失感と、それを所有することへの渇望。嫉妬の対象に抱く気持ちは、破壊衝動、もしくはそれ以上のものを得ようとする強烈な動機かもしれません。基本的に鉄男も町蔵も後者であり、どれだけはまり込もうと真っ直ぐ(と自分たちでは思っている)方向へ進もうとする気持ちがとても切なく感じられました。 
 作中、自ら漫画を表現方法として創造する才能が無いことを自覚している登場人物がこういいます。
 「あなたが描くうそは誰かがお金を払ってでも騙されたいものかしら」
 現在創作活動をしている漫画家で本当にこの言葉のような内容を意識している人はどれだけいるのでしょうか、と思ってしまうほどの強烈な台詞です。
 1巻でも感じていたように、鉄男は内面に恐ろしいほど熱いものを秘めていて、幼いころの経験をきっかけにそれを封印している感がありました。この巻の最後に、鉄男はあることに遭遇します。リミッタが外れた鉄男はどのように描かれるのか。明日、続きを読みます。

 登場人物はどの人も真っ向からぶつかって来て、彼らの一言一言が身に沁みます。本当に、いろんな人に読んでもらいたい。そう思える作品です。だから、あまり引用はしないようにしたいのですが、この台詞には、本当にやられました。



 「幸せだった。あのころは本当に幸せだったよ。オレはあのころの思い出があるから、今までやってこれたし、これから先どんなことにでも耐えられそうな気がするんだよ。もうオレとお前の人生は交わらないかもしれないが、お前はオレより先に死なないでくれ」