[読了] 菅野彰 屋上の暇人ども

屋上の暇人ども (1) (ウィングス文庫)

屋上の暇人ども (1) (ウィングス文庫)





 アキレス腱の断裂によって陸上競技を断念せざるを得なくなった元スプリンタ、鵜飼譲。陸上で推薦入学した彼は学内に行き場が無く、幼馴染の松下未来と天文部を創部する。その天文部に、学内では悪いうわさが絶えない百間鴫と凌霄夏女が入部するという。天文部を介して接点を持つうち、譲ると未来は鴫と夏女がうわさされるほど悪人ではないと感じ始める。生真面目な譲、はっきりした性格の未来、自由奔放と思わせつつ夏女には気を使う鴫、そして冷たいようで、見た目通り冷たい夏女。高校生活が始まったばかりの彼らが送る青春グラフィティ(少し古いかな?)。
 夏女のことになると見境が無くなる鴫と、鴫を見守っているようで他に行き場が無い夏女は共依存の関係にあります。相手に嫌われたくないから相手の行動をとめない。嫌われるはずは無いのに、と思いつつ離れることが恐ろしく、制止することが出来ない。他に頼れる相手が居なく、閉鎖された関係が続いていた彼らの壁を崩すのは譲と未来かもしれません。
 出版が99年で、なおかつ作者の出身校がモデルとなっていることから、時代はやや以前のように感じます。しかし、それはその時代を描いていると思えばそれほど違和感はありません。鴫と夏女が若干それっぽい雰囲気ではあるものの、ボーイズラブでは無いので、比較的あっさりと読むことが出来ました。続編も何冊かありますので、あまり時間を空けずに読みたいと思います。