[読了] 三原ミツカズ Doll 1巻

Doll 1 (Feelコミックス)

Doll 1 (Feelコミックス)





 もともとは寂しい気持ちを埋めてくれるために開発されたdoll。でも、他に頼るものの無い人、寂しくて仕方が無い人はどんどんdollに依存し、深みにはまっていきます。dollは違法改造を施され、ますます人に近づいていく。これは、dollと人が織りなす悲しくて切ない物語。
 -List1 
 高額なdollを娘に買い与える父親。不自由の無い生活だけれど、満たされない。誰も見ようとしなかった本音の私を見ていたのは・・・。
 心なんて無いはずのdoll。dollは彼女の今際の際まで寄り添います。信じられるものがあることに気がついた彼女は幸せだったのでしょうか。それとも不幸せだったのでしょうか。一見うつろな関係性に見えても本人にとってどうなのかは他人にはわかりません。
 -List2
 完璧な女性を求める優秀な会社員。彼が本当に求めていたのは・・・。
 外見では人間と見極めつかないdoll。改造されたdollは自らを人間と思っていたのかもしれません。物語の最後に主人公はdollに何をみていたのか気づきます。気持ち悪いと思う方も居るかもしれませんね。
 -List3
 かつて暴行された過去を持つクリスチャンの女性。彼女に仕えるdollは・・・。
 最後のシーンが美しい。そして周囲の人間もdollという言葉に惑わされ、固定された視点からしか物事を見ることが出来ません。その束縛から逃れた若者は最後のシーンに至るまでのきっかけになっていると思います。
 -List4
 Dollが開発されるまでの物語。天才技術者とその相棒はdollがどこまで人に近づけるか追求する・・・。
 機械はどこまで人に近づけるのか、そして、どこまで人に近づけても良いものか。病に倒れた彼女ために僕は何が出来るのか。その答えはひとつの真実であり、彼にとっては全てです。Doll開発にこめた彼らの思いはきちんと引き継がれるのでしょうか。
 -List5
 中の悪い親子。なくなった母親の代わりに父親は高額なdollを購入したと思い込む息子。事故を境に父親の思いを知る。
 これが、本来望まれていたdollの社会への関与の仕方ではないでしょうか。
 -List6
 自らを醜いと思い込んでいる女性。その理由は付き合っていた彼に振られてしまったから。彼女を慰めるDollを傷つけるのは?
 元彼氏が最後に凄い言葉を突きつけます。これは凄い。事実だけに恐ろしい言葉でした。

 三原ミツカズの描く物語は壊れてしまった人が出てきたり、そうかと思ったら暖かい家族の物語が来たりして、読書中の感情の振幅が激しくなってしまいますが、それがいいのです。三原ミツカズさんは、人の可能性を信じている、そう思わせる作家です。