[読了] 三浦しおん 格闘する者に○

格闘する者に○ (新潮文庫)

格闘する者に○ (新潮文庫)

 




 女子大生の可南子は編集者を目指して就職活動中。美しい脚を持つためか、面接ではセクハラまがいのことを言われたり、最初から採用する気のなさそうな態度をとられたりして、気分はめいるばかり。恋人である西園寺さんは可南子を急かすことなく悠々とした態度で接してくれる。劇的なことは何も無く、これからもきっと無いだろう。本作は可南子の青春時代の、ほんの一部を切り抜いた物語。
 三浦しおんさんのデビュー作。文庫化されていたので改めて読みました。以前読んだ時は三浦しおんさんがどのような方かも知らなかったのですが、これまでエッセイなどを読んでから改めて再読すると、主人公の可南子は自虐的なユーモアや漫画にかける愛情など、三浦しおんさんに重なって見えます。友人の砂子さんなども、もしかしたらモデルがいらっしゃるかもしれません(弟も)。
 西園寺さんとの恋愛など、多少美化されている面もありますが、視点は常に冷静で、怒っている自分をも客観的に見ており、好感が持てる文章です。この本が三浦しおんさんとの出会いであり、その後全作品(エッセイ除く)を読むきっかけになりました。文庫版ではイラストレータが変わってしまって残念です。藤原薫さんだったかと思うのですが、彼女のイラストのほうが内容に近いイメージです。
 本作がどのような作品なのかを知るために、まず、巻末の解説を読んでみるのもひとつの手かも知れませんね。特に、274ページにある、本書〜の一段落は同じ感想を持っています。