[読了] 西尾維新 ニンギョウがニンギョウ

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)

ニンギョウがニンギョウ (講談社ノベルス)





 映画を見なければならぬ。十七番目の妹のために。
 これまでの戯言シリーズやりすかとは趣の異なった文章で描かれた西尾維新の新作です。書影はウェブ上で見ていたので知っていたのですが、あまりの薄さにそれとは気づかずに通り過ぎてしまうところでした。大正から昭和初期をイメージしたのでしょうか、油紙で覆われた本体と、意図的に掠れさせたような印刷です。これは講談社の戦略なのかも知れませんが、あまりよかったとは思えませんでした。凝った装丁で、そのため値段がつりあがっています。西尾維新人気にあやかった戦略かもしれません。豪華な装丁をした本では往々にして、「これらの装丁は採算を度外視した」などのコメントが有りますが、本作ではどうなのでしょう。実際に採算が取れないものを販売することはあまり無いと思うのです。
 あらすじを書ける内容ではなかったので書きませんでしたが、似非古風文章は嫌いではありません。23人もの妹がいる主人公。誰も固有名詞を持たない世界。しゃべる熊。何かを象徴しているのかもしれませんが、知識が少ないので良くわかりませんでした。始めは童謡が隠されているのかと思いましたがそうでもありません。この世界で兄と妹とは何なのか。ミステリではないし、何かが明らかになることが全てとも思いません。だから、誰かの夢のような、妄想のような内容でもその世界観を楽しめる人には楽しめると思います。