[読了] 三原ミツカズ 死化粧師 1〜3巻

死化粧師 1 (Feelコミックス) 死化粧師 2 (Feelコミックス) 死化粧師 3 (Feelコミックス)




 間宮心十郎はエンバーマ。日本ではあまり馴染みが無いエンバーマとは死体修復師のことで、遺体のやつれや損壊を生前の姿に戻すと言う職業。遺体に手を加えることを良しとしない日本では偏見も多く、嫌がらせを受けることも多い。それにもかかわらず心十郎がエンバーマを職業として選択したことには理由があった・・・。
 1巻ではエンバーマの仕事を紹介する、導入的な内容が多かったかもしれません。個人個人に人生があるように、死後、遺体を修復すべき理由は個人個人で異なります。夢半ばで命を絶たれた女性、病気のため最愛の息子に近づくことも出来ず、失意のうちになくなった男性。エンバーミングは死体を修復するだけではなく、病気を駆除することで最後の、本当に最後の面会を果たすことが出来るようにする技術であることがわかります。
 2巻では心十郎の初恋が描かれたりとライバル(?)の人形師が登場したりします。形は異なれどどちらも相手のために良かれと思い行動します。どちらが是でどちらが非と問うことは出来ません。
 そして最新作の3巻では心十郎の父親が登場します。母親の今際の際にいなかった父親。その理由は彼がエンバーミングをしていたから。最愛の妻をエンバーミングできるのか?その問いに彼は行動で示します。亡き妻との約束。抵抗が無かったとは思えません。それを実行できたのは彼の深い愛情と決意。美しい場面です。印象的で、忘れられません。後半では留学時代の心十郎が描かれており、エンバーマとしての知識を得、技術を磨くとともに葛藤します。同室の長にも共通する最大のテーマは・・・。
 三原ミツカズはゴシックロリータを描いていることから絵に注目されがちかもしれませんが、人の醜い部分、歪んでしまったり壊れてしまった精神、そして何よりも愛情の深さを描くことが出来る作家だと思います。人は脆く、儚く、醜い存在かもしれませんが、反面、逞しく、強靭で、美しい。著者がそう考えていることが伝わってくる作品ではないでしょうか。続編に期待します。