[読了]こうの史代 「こっこさん」 「長い道」

こっこさん長い道 (Action comics)

 下校途中、道を塞いでいた鶏に出会ったやよいは給食の残りを与え、それがきっかけで鶏を家で飼育することになる。こっこさんと名づけられた鶏は傍若無人(鳥だから)だが、やよいは懸命に飼育する。ひよこから飼い始めたわけでもなく、すぐに愛情が芽生えるわけではなかったが、こっこさんはすっかりやよいの生活の一部となる。
 感覚としては数年前、十数年前の日常風景を描いているような印象を受けました(前世紀末のようです)。とくに大きな盛り上がりがあるわけではないのですが、間の取り方というか、空気が良いですね。やよいがとても優しく、姉のはづきとも仲が良いのがとても微笑ましかったです。こっこさんは明け方でもかまわず大声で鳴き、せっかくあつらえた物をついばみます。追い出してしまったり、絞めてしまったとしても攻められる謂れはないかもしれません。でも、やよいとその家族はそれも鳥の習性だと受け入れます。それは、簡単なようでなかなかできないと思います。時折挟まれる、神の視点(作者)のコメントが面白く、最終ページのコメントは最高でした。一つ一つの感想を書くとどうしても内容に触れてしまうのであまり書けませんが、おそらくふとしたときに読み返す作品になると思います。

  • 長い道

 自称プレイボーイの荘介は親同士のやり取りから、一度もであったことのない道という女性を娶ることになった。のんびりとした性格の道との生活はさほど違和感もなく始まってしまうが、甲斐性のない荘介は家事をこなしてくれる道を追い出すこともできず、二人の生活は続いていく・・・。
 まあ、これほどのんびりした性格の人はいないだろうとは思いつつ読みました。道に限らず、登場人物のほとんどが悲壮感のないキャラなので、そういう世界感だと思えば特に不具合は感じません。こっこさんと同様、一話が3から4ページの作品なのであまり内容に触れることはできませんが、少しだけ。いろいろと表現方法を試みた模様ですが、お気に入りなのは、横に細長いコマの中で、右と左で平行して話が進んでいくページです。実際の感覚に近いものを感じました(少し大げさですが)。これも、何気なく読み返す作品になると思います。
 
 どちらも、不意に見せられる大きなコマでの表現に郷愁を誘われました。スクリーントーンを使わない画風も大きく寄与しているのでしょう。また、登場人物が読んでいる本のタイトルとか、手紙やちらしの内容が、くすっと軽い笑いをもたらしてくれます。
 実際に読み始めたのは「長い道」が先だったので、こっこさんを読んでいる最中で、あれっと思いました。そして、長い道を読み返すと、思いがけないところでのリンクが(注意不足なだけかもしれません)。